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トリスタン以後 記事一覧
2018年01月06日:  オテロ(1880-86)
2017年12月23日:  エフゲニー・オネーギン(1877-78)
2017年12月09日:  カルメン(1873-74)
2017年11月25日:  ボリス・ゴドゥノフ (1872 改訂版)
2017年11月03日:  トリスタンとイゾルデ (1857-59)
2017年09月02日:  恋するにゃこたん or 愛の妙薬

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オテロ(1880-86) [トリスタン以後]

ヴェルディ(1813-1901)
「オテロ」(Otello, 1880-86)


--- ドラマ形式という点では、すべてが計算/熟考され尽くされ、新しい芸術の仕方を完全に受け入れたように見える。しかし発想においては、ああ、ヴェルディは何も変わっていない。彼は彼のままだ... "音楽=イタリア"は未だ失われてはいない。---

(批評家 Ugo Captti, 1887.2.5/ミラノ・スカラ座, オテロ初演)


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  Lion of Venice( from Wikipedia )


アイーダ (1870)、レクイエム (1873) 以降、作曲から遠ざかって農場経営に勤しんでいたヴェルディが、楽譜出版社リコルディの周到な根回しと強力な働きかけに押されて、十数年振りに書き下ろしたオペラ。その晩年を飾る充実作です。

台本はシェークスピアの「オセロ」がベースで、シモン・ボッカネグラ改訂版 (1881)でヴェルディの信頼を得た、アリゴ・ボイトによるもの。ちなみに、アリゴの兄 カミロも才人で、ゴシック・リバイバルの建築家として、また文筆家としても活躍。小説「センス (Senso, 1882)」は、ヴェネチア国際映画祭《金獅子賞》にノミネートされた、ルキノ・ヴィスコンティの「夏の嵐 (Senso, 1954)」…イル・トロヴァトーレ, フェニーチェ劇場の場面から始まる… の原作にもなっています。


さて、ヴェルディはここで前作「アイーダ」にもいや増して、より音楽と劇とが一体化した世界を探っていますが、其の垣間見せるクロマティックな表情でさえ、1883年に死去したワーグナーへの追憶に聞こえてきます,,,

Gruppo_di_famiglia.png
 ルキノ・ヴィスコンティ「家族の肖像 (1974)」


...世代のせい? 「Ludwig」のヴィスコンティ、「BANANA FISH」の吉田秋生、《山猫》で思い浮かぶのは?



--- 主な登場人物 ---

 オテロ;ムーア人で、ヴェネツィア領キプロスの総督
 デズデーモナ:オテロの妻

 イアーゴ :オテロの旗手
 エミーリア:イアーゴの妻で、デズデーモナの女中

 カッシオ:オテロの副官
 モンターノ:キプロスの前総督
 ロドリーゴ:ヴェネツィアの貴族



 Otello trailer (The Royal Opera)


・楽曲解説(アントニオ・パッパーノ, 10分弱)
 Why performing Verdi's Otello ranks among opera's greatest challenges
 https://youtu.be/R5JZGBhbK_Q



--- 開演 ---

第1幕:キプロス島の海に面した砦の外
沖合では将軍オテロの率いるヴェネツィア艦隊が、嵐の吹き荒れる海でのトルコ艦隊との海戦に勝利し戻ってくる。民衆が心配そうに見守る中、荒海の中やっとの事で接岸した軍艦からオテロが上陸してくる。オテロは歓呼して迎える民衆に「喜べ、高慢なる回教徒は海に沈んだ」と高らかに歌い、人々に送られて城の中に入っていく。

嵐も静まり人々は戦勝気分に酔って騒ぎ始める。デズデーモナにふられ沈んでいるロドリーゴのところへイアーゴが近づき、実は俺も黒人のオテロと副官のカッシオに恨みがある、きっと仇を討ってやると囁き、「乾杯の歌」を歌いながら断るカッシオにどんどん酒を勧め泥酔させる。その時、折から砦の見張りの番だと告げられたカッシオは、千鳥足で行こうとして皆に笑われ、前総督モンターノにも見咎められるので怒り、剣を抜いてしまう。イアーゴは騒ぎを煽り、城外は大騒動になってしまう。

騒ぎを聞きつけたオテロが砦から出てくる。カッシオは総督の出現に驚き剣を収めるが、すでにモンターノは傷ついている。また愛妻のデズデーモナまでが眠りを覚まされて出てきたのを見て、前任者をかような不祥事に遭わせ、彼女まで起こしてしまったと憤慨してカッシオを罷免し、皆に帰宅を命ずる。事の成り行きで夜更けの海岸に妻と二人っきりになったオテロは優しく彼女に話しかける、二重唱「もう夜も更けた」。オテロは妻に三度接吻しやさしく抱きしめる。

第2幕:城内の庭園
沈んでいるカッシオにイアーゴは復官のためにはデズデーモナに取り入るのが一番だと囁き、頷いて立ち去る彼の姿を見送りながら悪魔への信条「クレード」を歌う。庭に出てきたデズデーモナにカッシオが近づき取りなしを頼みこむ。しかしそのとき遠くにオテロの姿が見えるのでカッシオは逃げ去る。

イアーゴは現れたオテロに気づかぬふりをしながら、「何たることだと」つぶやき、オテロはそれを聞き咎める。イアーゴは、いや何でもないと思わせぶりに言い、問い詰めるオテロに、カッシオとデズデーモナについて奥歯に物の挟まった言い方でつぶやき、オテロに二人の関係について疑念を持たせる。

島民たちと船乗りたちがデズデーモナに花を捧げに来る。皆が立ち去ると彼女はオテロの執務室に入ってきてカッシオの赦免を願う。彼は疑いを裏書するような妻の願いに、だんだんと不機嫌になってくる。気づかぬデズデーモナは夫が普段のように言うことを聞いてくれないので意地になって主張する。そして脂汗を浮かべた彼の顔を拭こうとすると、オテロはハンカチを払い落とす。侍女のエミーリアがそれを拾い上げると夫のイアーゴがそれをひったくる。デズデーモナは甘えるように夫に許しを求め、オテロは妻の汚れなき顔を見て悩む。四人四様の心情を吐露した四重唱の後、デズデーモナとエミーリアは立ち去る。

オテロは妻への疑いを深め苦悩する、モノローグ「さらば栄光よ」。さらにイアーゴを捕えて証拠はどこにあるのかと詰め寄る。イアーゴは証拠はないが、カッシオが寝言でデズデーモナとの愛を呟いたと囁き、さらに彼が彼女のハンカチを持っていたと言うに及んで、オテロの怒りは爆発し、死神に復讐を誓う、二重唱「大理石のような天に誓う」。

第3幕:城砦の大広間
ヴェネツィア大使の軍艦が港外に見えたことが告げられる。イアーゴはオテロに、ここにカッシオを誘い出して不義の証拠を何とかお見せしましょうと言い、立ち去る。

そこにデズデーモナが現れ再びカッシオの赦免をと執拗に迫るので、オテロは妻に対する疑念をますます深め、自分が贈ったハンカチを持っているかと確かめると、彼女は持っておらず、当惑するのを見てついに彼女を「売女」と決めつけ、驚き悲しむ妻を立ち去らせ絶望して呟く、「神はすべての恥辱を私に与えるか」。

イアーゴがカッシオを連れて現れ、隠れているオテロに見え隠れにカッシオの情婦ビアンカの話を持ちかける。彼は笑いながらそれに応え、自分の家にこんなハンカチが落ちていたと例のハンカチを取り出す。イアーゴはそれをそっとオテロに見せ、カッシオを立ち去らせる。妻の不貞を確信したオテロはどうやって妻を殺すかと叫ぶ。イアーゴはあの汚れたベッドの上でと言う。

ヴェネツィア大使一行が到着し、島の主だったもの全てが集まってくる。大使はオテロにヴェネツィアへの帰還と後任はカッシオであることを伝える命令書を手渡す。オテロはそれを読み上げ、悲しげな妻にカッシオとの別れが辛いものと誤解し、彼女を罵倒し突き倒す。あまりのことに人々は驚愕しその場を立ち去る。一人残ったオテロは悶絶し、戻ってきたイアーゴが勝ち誇ったように「これがヴェネツィアの獅子か」と高らかに笑う。

第4幕:デズデーモナの寝室
デズデーモナはエミーリアに髪を梳かせながら「柳の歌」を歌い、彼女を退けて静かに「アヴェ・マリア」を唱えて床に就く。オテロが現れ、妻の不貞を責め、壮絶な二重唱「今夜の祈りは済ませたか?」となる。

無実を訴える妻の首を絞めデズデモーナがぐったりとなった時、扉をノックする音が聞こえ、エミーリアが駆け込んでくる。彼女はカッシオがロドリーゴを殺したことを告げる。その時、デズデモーナが虫の息で呟くのが聞こえる。驚くエミーリアに「わしが殺した」とオテロが言うので、エミーリアは大声で「デズデモーナが殺された」と叫ぶ。驚き皆が集まってくる。

その場でハンカチの件はエミーリアの口から明らかになり、ロドリーゴも死ぬ前にイアーゴの奸計を告白したとモンターノが告げる。すべてを知ったオテロは短剣で、自らの胸を刺し、最後に妻に三度接吻して事切れる。

--- 終演(約2時間20分) ---
(参考 Wikipedia)


---

今回参考にしたCDはこちら。チョン・ミュンフンとオペラ・バスティーユの蜜月の記録です。嵐で始まる音の奔流に飲み込まれてください。

 otello.jpg
「オテロ」全曲 チョン・ミョンフン&バスティーユ歌劇場、ドミンゴ、ステューダー、レイフェルクス(1993)

https://ja.wikipedia.org/wiki/オテロ_(ヴェルディ)

--- memo ---
 ナブッコ (Nabucco, 1840-41)
 エルナーニ (Ernani, 1843-44)
 マクベス (Macbeth, 1846-47, 仏語改訂1865)
 リゴレット (Rigoletto, 1850-51)
 イル・トロヴァトーレ (Il Trovatore, 1852-53)
 椿姫 (La Traviata, 1853)
 シチリア島の夕べの祈り (Les vêpres siciliennes, 1855)
 シモン・ボッカネグラ (Simon Boccanegra, 1856-57, 改訂1881)
 仮面舞踏会 (Un Ballo in Maschera, 1857-58)
 運命の力 (La forza del destino, 1861-62, 改訂1869)
 ドン・カルロ (Don Carlo, 仏語1866, 改訂1884-全4幕, 改訂1886-全5幕)
 アイーダ (Aida, 1870)
 オテロ (Otello, 1880-86)
 ファルスタッフ (Falstaff, 1889-92)

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エフゲニー・オネーギン(1877-78) [トリスタン以後]

チャイコフスキー(1840-1893)
「エフゲニー・オネーギン」(Eugene Onegin, 1877-78)


duel-ilya-repin.jpg
 "The Duel" by Ilya Repin, 1901


オペラ台本の原作はプーシキンの韻文小説「エフゲニー・オネーギン」。色男、告られて振った小娘が、いつの間にかイイ女に... 思い直してアタックするが、時すでに遅し。

モスクワ音楽院の教師で歌手のエリザヴェート・ラヴロフスカヤからオペラ化の話を持ちかけられた時には、文学としては魅力的だけど題材には弱いなと、にべもなかったチャイコフスキー... 考え直して数日間眠れぬ夜を過ごした後、一晩でシナリオを完成させたそうです

ピアノ協奏曲第1番 (1874-75)、バレエ「白鳥の湖 (1875-76)」と続いて、1877-78年に交響曲第4番と同時進行で作曲され、同じくサンレモで、こちらは一ヶ月後に完成しています。チャイコフスキーのオペラの中では一番演奏される機会の多いもので、次が「スペードの女王 (1890)」でしょうか。

初演は1881年、モスクワ・ボリショイ劇場にて。


あと、1965年にシュトゥットガルト・バレエによって初演された、バレエ「オネーギン」というのも。振付けは、同バレエ団の芸術監督であったジョン・クランコ。音楽は、同オペラからではなくピアノ曲「四季」など、他のチャイコフスキー楽曲を編曲したものです。(下はインタビュー動画)

 Natalia_Osipova_on_Onegin.jpg
 Natalia Osipova on Onegin (The Royal Ballet)


Gagner ! いよいよ今夜、「武蔵野の森」での女子フリー。オリンピックの出場2枠に飛び込んでくるのは誰と誰になるんでしょうね。


--- 主な登場人物 ---

 オネーギン:主人公
 レンスキー:オネーギンの友人、オリガの婚約者
 グレーミン:公爵、後のタチヤーナの結婚相手

 ラーリナ:荘園の夫人
 タチヤーナ:ラーリナの娘
 オリガ:タチヤーナの妹


・ポロネーズ:第3幕-第1場

 Trailer: Eugene Onegin 2016


・手紙の場:第1幕-第2場

 Tatyana's Letter Scene.Olga Poltoratskaya.P.I.Tchaikovsky. "Eugene Onegin".

--- 開演 ---

第1幕:第1場:地方貴族ラーリン家の庭
秋の夕方、タチヤーナとオリガの姉妹が「聞こえたかしら、夜鳴きうぐいすの声が」と歌っている。娘たちの声を聞いてラーリナは若かりし頃を思い出し、老いた乳母を相手に夢多き娘時代のことや、結婚後の暮らしを回想する。そこへ農民たちが刈り入れ時のしきたりで、麦の束を持ってやってくる。ラーリナは農民たちをねぎらい、農民たちは陽気に民謡風の歌「小さな橋の上で」を合唱して踊る。

姉のタチヤーナは口数少なく沈みがち。一方、妹のオリガは快活な美人、「私はのんきで、悪戯が好き」と歌う。夢見がちで読書の好きなタチヤーナは、恋物語を読んだせいで物思いに誘われている。

そこへオリガの婚約者レンスキーが友人のオネーギンを連れてやってくる。理想化肌の若者レンスキーはオリガを熱愛している。一方、オネーギンはペテルブルクの社交界で暮らすうちに、若くして人生に退屈してしまってと,,, 遺産相続をした田舎の叔父の領地へやってきて、近隣に住む、気質の正反対な地主貴族レンスキーと交際するようになったという成り行き。

オネーギンはタチヤーナに紹介され、初対面の二人は語り合う。タチヤーナは、言葉少なだがバイロン的憂愁を漂わせる都会人のオネーギンにすっかり心を奪われる。

 第2場:タチヤーナの部屋
恋に落ちたタチヤーナは眠れない。彼女に頼まれて、乳母が昔に嫁入りした頃の思い出話をする。乳母が去ると、タチヤーナは初恋の甘美な悩みに乱れる胸の想いを、オネーギンへの手紙に綴り始める。「あなたは長い間、私が待っていた人。どういうお方なのでしょう? 私の迷いを解いてください」。恋文を書き終えると夜明けが訪れ、彼女は頬を染めて、乳母に手紙を託す。

 第3場:ラーリン家の庭の一隅
農民の娘たちの歌う苺摘みの歌が聞こえてくる。オネーギンの来訪を知ったタチヤーナが、不安におののきながら庭に逃げてくる。その後からオネーギンが現れ、冷ややかに手紙に対する返事をする。「自分は家庭の幸福には関心がないし、結婚には向かない男だ。兄のようにあなたを愛そう。しかし軽率さは不幸の元、自分を抑えることを学びなさい」と。タチヤーナは恥辱と絶望にうなだれる。

第2幕:第1場:ラーリン家の大広間
数ヶ月後のラーリン家の大広間。タチヤーナの「聖命日」の祝いに、着飾った客たちが集まり、ワルツを踊っている。オネーギンは婦人客が自分の陰口をするのに気づいて不愉快になる。くだらない集いに誘ったレンスキーへの腹いせとばかりに、しきりにオリガをダンスに誘う。コケットなオリガは嬉しそうに応じて、レンスキーを苛立たせる。

ラーリン家の家庭教師トリケが、タチヤーナへの讃歌を披露した後、マズルカが演奏され、オネーギンはまたしてもオリガと踊る。怒ったレンスキーはオネーギンと口論し始め、しまいには手袋を投げて決闘を申し込む。驚く客たちとラーリナ。レンスキーは「あなたの家で恋を知り」としばし思い出に浸る。オネーギンは後悔しながらも後には引けない気持ちを、ラーリン姉妹は悲痛な思いを歌う。

レンスキーはオリガに「僕の天使よ、あなたを低俗な誘惑者から守らなければ」と声をかけ、座を蹴って退場。一同は祝宴の思いもよらない事態に茫然とする。

 第2場:水車小屋・冬の早朝
レンスキーと介添人のザレツキーが、オネーギンの来るのを待っている。レンスキーは「僕の青春の黄金の日々はどこに去ってしまったのか?」と歌いだし、オリガへの愛を切々と歌う。オネーギンが到着して、介添人たちは決闘の準備にかかる。レンスキーとオネーギンは友が敵になってしまった無念な胸中をそれぞれに歌う。ピストルを手に向かい合う二人。銃声一発、倒れるレンスキー。「死んだ!」とつぶやき、茫然と佇むオネーギン。

第3幕:第1場:サンクトペテルブルクの大舞踏会
数年後、華やかな舞踏会の最中で、ポロネーズが鳴り響いている。長い旅から戻ったばかりのオネーギンが現れ、「どこへ行っても安らぎはなく、相変わらず退屈で」と独白。音楽はエコセーズに変わり、周囲の客たちはオネーギンを白い目で見る。

グレーミン公爵が夫人のタチヤーナを伴って姿を見せる。結婚した彼女は見違えるほど堂々とした社交界の女王となっている。オネーギンはかつての隣人グレーミン公爵がタチヤーナと結婚したことを知って驚く。

彼を前に、公爵は夫人への愛情を歌う「誰でも一度は恋をして」。タチヤーナはオネーギンに紹介されるが動じる様子もない。オネーギンの胸には激しい恋心が燃え上がる。

 第2場:グレーミン公爵邸の一室
タチヤーナがオネーギンから来た手紙を手にして涙ぐんでいる。思いがけない再会と恋文に、娘の頃のように心を乱されている。

そこへオネーギンが入ってきて、跪く。タチヤーナは素直に話しかける。「幼い私の恋に対してあなたは立派に振舞われました。それが今になって、なぜ、つまらない感情の奴隷に?」「真心から愛しています」とオネーギン。「幸福はあんなにも近くにありましたのに。あなたを愛していますが、私は嫁いだ身、夫に貞操を守ります」。タチヤーナはきっぱりと別れを告げて立ち去る。オネーギンは恥辱と酷い運命に打ちのめされる。

--- 終演(約2時間35分) ---
(参考 Wikipedia)


---

今回視聴したのはこちら。グラインドボーン音楽祭の音楽監督を務めている若手指揮者ロビン・ティチアーティ (1983年ロンドン生まれ) のもの。主役二人の歌唱に、その分身のバレエダンサーによる演技を重ねて、ストーリーに陰影を付けた演出です。

 tchaikovsky_eugene_onegin.jpg
「エフゲニ・オネーギン」、ティチアーティ&コヴェント・ガーデン、キーンリーサイド、ストヤノヴァ(2013、日本語字幕付)

https://ja.wikipedia.org/wiki/エフゲニー・オネーギン_(オペラ)

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カルメン(1873-74) [トリスタン以後]

ビゼー(1838-1875)
「カルメン」(Carmen, 1873-74)


オペラ「カルメン」は、パリのオペラ・コミックのために書かれました。初演は1875年。楽曲間をレチタティーヴォではなく台詞でつないでいく、オペラ・コミック様式で作曲されています。

Goya_Maja_naga.jpg
 "La maja desnuda" by Francisco Goya, 1797–1800


鑑賞者に向けられる真っ直ぐな視線、「裸のマハ(=マドリー娘)」。作者のゴヤが亡命先のボルドーで亡くなるのが1828年。その2年後の1830年6月に、プロスペル・メリメはスペインへ旅をします。ところが直後にフランスでは7月革命が起こり、メリメは滞在延長を決定。フランスに戻ったのは翌年の1月です。

その間の出来事の一つを綴ったのが、プーシキンの物語詩「ジプシー」を参考にしたとも言われる、1845年発表の小説「カルメン」。旅先で美しいヒターナ(=カルメン)に出会い、彼女の家でいろいろと話を聞きますが、バスク人のホセに追い出され、気がつくと懐中時計が失くなっている。数ヶ月後コルドバで友人から、ホセが捕まって明日処刑されると教えられ、面会に行き、生まれてから現在までの彼の話を聞くといった内容です。

題材を選んだビゼーの狙いはどこにあったのか… オペラ化に当たってアンリ・メイヤックの台本では、スペイン社会の"異人"たちの物語という視点は薄められています。


--- 主な登場人物 ---

 カルメン:煙草工場で働くジプシーの女
 エスカミーリョ:闘牛士

 ドン・ホセ:衛兵の伍長
 ミカエラ:ホセの許婚

 スニガ:衛兵の隊長


幕開きはセビリアの煙草工場から。JTのサイトに、煙草に着目した読み物があったので紹介。 --> カルメンが巻いたシガー


・ハバネラ(エリーナ・ガランチャ)

 Carmen: "L'amour est un oiseau rebelle" (Elina Garance)


・闘牛士の歌(イルダール・アブドラザコフ、2016 パリ祭 : シャン・ド・マルス)

 Ildar Abdrazakov - Carmen : « Votre toast » (Bizet)

--- 開演 ---

第1幕:セビリアの広場。右手に煙草工場の扉、左手に衛兵詰所。
伍長のモラーレスと配下の衛兵たちが、往来の人々を眺めている。やがてミカエラが登場し、彼女を呼び止めたモラーレスにドン・ホセを探していることを告げる。モラーレスは交替の時間になればやってくるから、それまで待つようにとすすめるが、ミカエラはその場を逃れてしまう。

遠くでラッパが鳴り、衛兵たちが整列すると、子供たちにつきまとわれた交替の衛兵たちが、隊長スニガや伍長ドン・ホセとともに行進してくる。モラーレスはドン・ホセにミカエラのことを語り、子供たちにつきまとわれながら自分の班の衛兵たちと退場する。ホセはスニガにミカエラを愛していると語る。

昼休みを告げる鐘が鳴り、町の若者たちが集まると、煙草工場の女工たちが登場し、男たちに迎えられる。カルメンが登場し、ホセに目をとめる。カルメンは自分に無関心なホセに興味を抱き、恋は野生の野の鳥のように慣らすことのできないもの、好かれたらご用心と、有名なハバネラを歌う。若者たちはカルメンに言い寄るが、彼女は見向きもせず、手にしたアカシアの黄色い花をホセに投げつけて去る。

人々も去り、ホセはひとりカルメンの魅力に惹かれてその花を拾い上げるが、そこにミカエラがやってくるので、ふたりは再会を喜び合う。

ミカエラはホセに、彼の母からの手紙と金を渡し、伝言とともに接吻までも伝える。ふたりは感激し、故郷に思いを馳せるが、ホセの心にはカルメンの面影がふとちらついたりもする。しかしミカエラが去った後、母の手紙を読み、母の言う通りミカエラと結婚しようと決意する。

突然騒ぎが起こり、スニガが衛兵を伴って出てくると、煙草工場から女工たちが飛び出してくる。彼女たちは二手に分かれて喧嘩を始めたのだ。スニガの命令で工場に入ったホセは、やがて喧嘩の張本人カルメンを引きたてて戻って来る。全く反省の色のないカルメンは投獄されることになるが、彼女はホセを誘惑にかかる。リーリャス・バスティアの酒場でセギデーリャを踊りマンサニーリャを飲もう、というカルメンの誘惑についに抗しきれず、ホセは彼女の戒めのロープを解いてしまう。スニガが令状を持って現れると、カルメンは隙をついてホセを突き倒し、混乱の中をまんまと逃げ去ってしまう。

第2幕:リーリャス・バスティアの酒場
カルメンが、仲間のフラスキータやメルセデスとともに客の相手をし、ジプシーの唄を歌っている。

閉店の時刻になり、客として来ていたスニガも、ホセが牢から出たことをカルメンに告げて帰ろうとするが、そこに歓声とともに人気闘牛士エスカミーリョが現れ、闘牛士の歌を歌う。彼はカルメンに目を止めるが、人々を引き連れて去り、そのあとやってきた密輸業者の仲間、ダンカイロとレメンダートは、カルメンが恋しているというホセを仲間に引き入れようと計る。

ホセが現れ、カルメンはカスタネットを鳴らしながら歌って彼を慰めようとするが、彼の心は晴れず、兵営に帰ろうとする。カルメンがそれならさっさと帰れと言うと、彼女がホセに投げ与えた花を牢の中で慈しみ、もう一度逢いたいとのみ思って耐えたと、花の歌を歌って、カルメンへの思いを訴える。しかし脱走兵になることはできないと、カルメンの仲間になれという誘いは断る。ところがそこに戻ってきたスニガと口論から争いになり、密輸業者たちがスニガを取り押さえると、ついにホセは、悪事の仲間に加わることを承諾してしまう。

第3幕:山中の岩場
暗い夜。ジプシーの密輸業者たちが休息をしている。カルメンはもうそれほど、ホセを愛していない様子である。彼女は仲間にならってカード占いを始めるが、何回やっても死の札が出てしまうので当惑する。

全員が退場すると案内人に伴われてミカエラが現れ、ホセを連れ出す決意を歌い(ミカエラのアリア)、神の加護を願う。見張りをしていたホセが発砲したのでミカエラが隠れると、エスカミーリョが登場し、ホセに呼び止められる。エスカミーリョは愛する女に逢いに来たと言い、その女がカルメンだと明かすので、決闘になってしまう。ジプシーたちが二人を分け、エスカミーリョが去ると、仲間に発見されたミカエラが連れてこられ、ホセの母が危篤だと伝える。ホセはカルメンに未練を残しながらも、一旦ミカエラとともに下山することを決意する。

第4幕:闘牛場前の広場
闘牛の行われる日とあって、大変な賑わいである。やがてエスカミーリョが着飾ったカルメンを伴って現れ、群衆の歓呼に迎えられる。メルセデスとフラスキータはカルメンに、ホセが来ているから注意しろというが、カルメンは気にする様子もない。

やがてカルメンひとりになると、物陰からホセが現れる。ホセはカルメンに、もう一度出直そうと懇願するが、カルメンは一向に取り合わず、二人の恋はもうおしまいなのだと答える。ホセはなおも食い下がるが、カルメンはかえってホセへの嫌悪をあらわにするばかり。

闘牛場から湧き上がる勝利の歓声にカルメンが入り口に駆け寄ると、ホセはあいつを愛しているのかと詰問する。カルメンはエスカミーリョを死んでも愛していると答え、ホセから貰った指輪を投げつける。ついにホセは、カルメンを隠し持った短刀で刺し殺し、カルメンへの愛を口走りながら、その死体に身を投げだす。

--- 終演(約2時間40分) ---
(参考 Wikipedia)


---

今回参考にしたCDはこちら。シノーポリとバイエルン州立ということで暗さを警戒されるかもしれませんが、あにはからんや、ラテン系のノリの良い演奏です。

 carmen.jpg
「カルメン」全曲 シノーポリ&バイエルン国立歌劇場、ラーモア、ゲオルギュー、モーザー、レイミー(1995)

https://ja.wikipedia.org/wiki/カルメン_(オペラ)

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ボリス・ゴドゥノフ (1872 改訂版) [トリスタン以後]

ムソルグスキー(1839-1881)
「ボリス・ゴドゥノフ」(Boris Godunov, 1872, Revised Version)


ボリス・ゴドゥノフの在位は1598-1605年と短期間。イワン雷帝の息子フョードル1世が1598年に没して断絶したリューリク朝の後継者として、ツァーリに議会選出されると、在位中の1601-1603年にはロシア大飢饉(南米ワイナプチナ火山の大噴火による世界的な寒冷化による)が起き、経済的混乱から社会が荒廃。政府統治を回復できぬまま1605年に亡くなります。その後も、ポーランド、リトアニア、スウェーデン各国の思惑が絡み合い、社会は一層混乱。民衆蜂起によってロマノフ朝が掲げられるまでの期間1598-1613年は、ロシアの「動乱時代」と呼ばれています。

ムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」は、"フョードル1世の息子ドミトリーは帝位を狙う摂政ボリスに殺害された"という民衆に流布した噂話(プーシキンが戯曲化)から、彼の心的葛藤をオペラ化したもので、1869年原典版と1872年改訂版、さらにはリムスキー・コルサコフ版、ボリショイ劇場版、ショスタコーヴィチ版と多バージョンあります。

全曲の初演は1874年サンクトペテルブルク、マリインスキー劇場にて。あらすじも1872年改訂版です。


--- 主な登場人物 ---

 ボリス・ゴドゥノフ:ロシアのツァーリ(皇帝)
 フョードル:ボリスの息子
 クセニヤ:フョードルの姉

 シューイスキー:公爵、ボリスの首席顧問

 ピーメン:修道僧、年代記の編纂者
 グリゴーリー:破戒僧、偽ディミトリー皇子
 ワルラーム:破戒僧、浮浪人
 ミサイル:破戒僧、浮浪人

 マリーナ:ポーランド貴族の娘



 Trailer BORIS GODUNOV


・プロローグ〜戴冠式の場(ピアノソロ)

 Pianist Gil Garburg perf's music from 'Boris Godunov'

--- 開演 ---

プロローグ:第1場:モスクワ近郊ノヴォデヴィチ修道院の中庭
フョードル帝が没した直後のモスクワ。先帝の妃の兄かつ摂政として実権を握ったボリス・ゴドゥノフは、世論に押されて帝位にのぼることを狙いノヴォデヴィチ修道院に閉じこもった。

幕が上がると、修道院の前に民衆が集まり、警吏に脅されて「ボリスが帝位に就くように」と嘆願する声を上げている。そこへ貴族会議の書記官が出てきて「ボリスは皇帝になることを承諾されない」と告げる。

 第2場:モスクワ クレムリン大聖堂広場(戴冠式の場)
それから間もないクレムリン宮殿の中の広場。鐘が鳴り響き、ボリスの戴冠式が行われている。やがて、貴族や民衆が「栄光あれ!」と歓呼する中に、帝冠を戴いたボリスが姿を見せる。重い心と不吉な予感を独白するが、神の加護を請い、全員を祝宴に招く。

第1幕:第1場:モスクワ クレムリン チュードフ修道院の僧坊
それから6年後、チュードフ修道院で老僧ピーメンが年代記の最後の章を記している。その横で眠っていた若い修道僧グリゴーリーが目を覚まし、「高い塔に登り、下から群衆に嘲笑され、真っ逆さまに落ちる」夢をまたも見たと語る。彼はピーメンから、「皇帝ボリスが、十数年前に幼くして死んだ皇子ディミトリーの暗殺事件の首謀者であり、皇子が生きていれば、お前と同じ年齢である」と聞いて、強い衝撃を受ける。

 第2場:リトアニア国境付近の旅籠
居酒屋のおかみが陽気に「雄がもの歌」を歌っているところへ、破戒僧のワルラームとミサイル、それに続いてグリゴーリーが入ってくる。酒にありついたワルラームは、イワン雷帝のタタール人征伐を物語る歌を披露する。

そこへ警吏がやってきて、モスクワの修道院から逃亡した破戒僧グリゴーリーの手配書を見せる。文字の読めるグリゴーリーはワルラームを犯人に仕立て上げようと、手配書の人相書きを違えて読み上げるが失敗し、ナイフを抜き、間一髪のところで窓から逃亡する。

第2幕:モスクワ クレムリンのテレムノイ宮殿にある皇帝の居間
急死した婚約者を偲んで泣く皇女クセニヤを慰めようと、乳母がおどけた「蚊の歌」を歌ってみせる。皇子ヒョードルも負けじと愉快な「雄鶏の歌」を歌い出す。そこへ皇帝ボリスが顔をのぞかせ、クセニヤに慰めの言葉をかけて別室へ下がらせると、ヒョードルとともに帝国の地図を眺める。そして「私は最高の権力を得たが、安らぎも喜びもない」と歌い出す。皇女の婚約者の死、貴族の反逆、飢饉と疫病による民心離反と不幸が重なる上に、皇子殺害による良心の苛責に心の休まる時がないと。

奸臣シューイスキーが入ってきて、ディミトリー皇子と称する男がポーランド軍を味方につけ、攻め入ろうとしていると報告する。ボリスは平静を失い、死んだのは確かに皇子だったかと尋ね、死に顔について語るシューイスキーの言葉をさえぎって退かせる。ボリスは良心の苛責に耐え切れず、「ああ、苦しい、息をつかせてくれ」と苦悶し、時計が鳴り始めるとともにディミトリー皇子の幻影を見て、「殺したのは自分ではない、人民の意志なのだ」と叫び、神に許しを乞う。

第3幕:第1場:ポーランド サンドミエシュ城内のマリーナの部屋
ポーランドの軍司令官ムニーシェク公の城では、モスクワ出兵の準備が進められ、夜会が開かれている。彼らは広大なロシアを支配し、カトリックに改宗させる野望のために、偽ディミトリー皇子(実はグリゴーリー)を利用しようとしている。そのために、ムニーシェク公の娘マリーナと偽ディミトリー皇子との接近が計られている。

マリーナは鏡の前に座り、小間使いに髪を梳かさせている。サンドミエシュの娘達が、マリーナの前で彼女の美しさを称えて歌を歌っているが、マリーナはそれが気に入らず、小間使いも娘達も下がらせてしまう。独りになった彼女は、自分は権力が欲しい、名誉が欲しい、そのために偽ドミトリーに近づいて、やがては皇帝の后になってやると歌う。

 第2場:サンドミエシュ城内。噴水のある月夜の庭園
庭園で貴族たちがポロネーズを踊った後で退くと二人の逢い引きが実現する。マリーナは燃える愛を語る偽ディミトリーの心を巧みに操り、彼の胸にモスクワ皇帝への野心を掻き立てるのに成功する。

第4幕:第1場:モスクワ クレムリンのグラノヴィータヤ宮殿(ボリスの死)
クレムリン宮殿の大広間では貴族会議が開かれ偽皇子への処置が議論されている。そこへシューイスキーが現れ、皇帝ボリスが半狂乱の態で、亡きディミトリー皇子の幻影を払いのけようとしていると告げる。

続いてボリスが錯乱状態で現れ、一旦は平静に戻るが、シューイスキーの導き入れた老僧ピーメンが、「さる盲目の羊飼いが夢のお告げによりディミトリー皇子の墓に詣でたところ、目が見えるようになった」という奇跡について語り始めると、それを聞くうちにボリスは苦しみ始め、皇子ヒョードルを呼び皇帝としての統治の心得を説き、神に許しを請いつつ息をひきとる。

 第2場:クロームィ近くの森の中の空き地(革命の場)
モスクワに近いクロームィ付近の森の中ではポーランド軍の進軍により暴徒化した民衆が、貴族を引っ捕え、罪深いボリスの手下としてなぶりものにしている。そこへ破戒僧ワルラームとミサイルが、サタンのボリスを倒し、正当な皇子ディミトリーを帝位に就けようと呼びかけながら現れ、民衆を扇動する。

ラッパが響いて、偽ディミトリー皇子が軍隊を率いて現れ、ボリス打倒の戦いへの支持を呼びかける。軍隊に従って民衆が去ると、聖愚者が「不幸なロシア、泣け、民よ」とつぶやく。

--- 終演(約3時間5分) ---
(参考 Wikipedia)


---

今回参考にしたCDはこちら。ゲルギエフ&キーロフの地場物。その風貌と指揮ぶりに反して、丁寧にロシア的情感をすくい取った音楽作りです。

 boris_godunov.jpg
「ボリス・ゴドゥノフ」全曲(1869年版&1872年版)ゲルギエフ&キーロフ歌劇場管(1997)

https://ja.wikipedia.org/wiki/ボリス・ゴドゥノフ_(オペラ)

--- memo ---
 禿山の聖ヨハネ祭の夜(1867, リムスキー・コルサコフ編曲版の原曲)
 ボリス・ゴドゥノフ(1868-69, 原典版)
 展覧会の絵(1874, ピアノ組曲)

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トリスタンとイゾルデ (1857-59) [トリスタン以後]

ワーグナー(1813-1883)
「トリスタンとイゾルデ」 (Tristan und Isolde, 1857-59)


ワーグナー自身による台本は、13世紀ドイツの詩人ゴットフリート・フォン・シュトラスブルクの叙事詩「トリスタンとイゾルデ」をベースにしたものとのこと。作曲期間は1857-59年で、諸々の事情により「ニーベルングの指環/ジークフリート」の作曲を一時中断して進められました。(「ニュルンベルクのマイスタージンガー」もこれに続いて書かれています)

初演は完成から6年遅れの1865年、バイエルン王フリードリッヒ2世の援助を受けてようやく、ミュンヘンのバイエルン宮廷歌劇場にて。

ワーグナー楽劇の特徴とされるのは、

 1. 周到なライトモチーフ
  --- 人物、場所、想念を端的に示す短いフレーズが張り巡らされていること

 2. 極端なクロマティシズム
  --- 調性が崩壊する間際まで半音階が多用されていること

で、「トリスタンとイゾルデ」は後者を象徴する作品とされています。

でもまあ、そういう分析は後付けで、詩と歌と管弦楽がワーグナーという一人の人物の中で融合され、それらが渾然一体となってひたすらドラマ性に奉仕する世界が立ち現れる様に、皆、魅了され影響されてきた歴史です。


--- 主な登場人物 ---

 マルケ王:コーンウォールの王
 メロート:マルケ王の家臣

 トリスタン:コーンウォールの騎士、マルケ王の甥
 クルヴェナール:トリスタンの従僕

 イゾルデ:アイルランドの王女
 ブランゲーネ:イゾルデの侍女

 (コーンウォール:
   ブリテン島南西の半島部分の先端に位置する。「地の果て」の象徴。)


・前奏曲と愛の死(Orchestral, Kloster Eberbach, 2014)

 Wagner: Tristan und Isolde – Vorspiel und Liebestod
   ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Andrés Orozco-Estrada

--- 開演 ---

第1幕:トリスタンの船のデッキ
 前奏曲〜第1場
アイルランドの王女イゾルデは、イングランドのコーンウォールのマルケ王に嫁ぐために海を渡っている途中。マルケ王の甥トリスタンが船の舵を取っている。水夫の歌う「吹け、吹け、風よ。嘆けよ、嘆け、アイルランドの娘」が聞こえる。イゾルデが侍女ブランゲーネに息がつまりそうだからと垂れ幕を上げるよう叫ぶ。
 第2場
前デッキで舵を取っているトリスタンの姿が見える。イゾルデは「航海中、あの男はずっと私を恐れていて挨拶にも来ない。呼んでおいで。」とブランゲーネに命ずる。トリスタンは「今の今、私が舵を手放したら、どうして無事にマルケの王国に着けようか」とブランゲーネに断りを入れる。さらに、トリスタンの従者クルヴェナールが「勇者トリスタンがアイルランドに払った貢ぎ物は、モロルトの首だった。千人のイゾルデ姫が束になってもビクともしない」と歌い、追い払う。
 第3場
歌での侮辱に腹を立てたイゾルデはブランゲーネに対して、トリスタンはその戦いで負った毒の傷を癒すため、タントリスと名を偽ってイゾルデの治療を受けに来たこと、また、欠けた剣から許嫁であるモロルトを殺した敵であることを知ったが、憐れみから命を助けてやったことを話す。そして、母が持たせてくれた薬箱を持ってくるようブランゲーネに命じ、その中から死の薬を取り上げて示す。
 第4場
「もうじき到着です」と告げに来たクルヴェナールに、イゾルデは再度トリスタンを呼びに行かせる。そして、ブランゲーネには杯の準備を指示する。
 第5場
ようやく姿を見せたトリスタンに向かい、イゾルデは恨みの数々を口にし、今までの諍いを水に流すため償いの杯を共に干そう、と言う。トリスタンが杯をあおっている途中でイゾルデはそれを奪い取り、半分残った杯を飲み干す。だがそれはブランゲーネがすり替えておいた愛の薬だった。トリスタンとイゾルデは固く抱き合い、船は波止場に着く。マルケ王を讃える歓呼が響く。

第2幕:コーンウォールにあるマルケ王の城中、イゾルデの部屋の前庭
 前奏曲〜第1場
夜狩りに出発した王の一行の角笛が次第に遠のいていくのに耳をすませるイゾルデとブランゲーネ。もう大丈夫と恋人に合図をしようとするイゾルデに、ブランゲーネは警告する。この急な夜狩りはトリスタンと王妃イゾルデの不義を疑う家臣メロートの企みではないかと。だがイゾルデは「松明を愛の女神の思し召し」と愛の夜を讃え、松明を地面に投げ捨て、次第に火は消えていく。
 第2場
駆け込んできたトリスタンと、イゾルデは抱擁しながら、永遠の夜と死を讃え、昼の世界の名誉や誇りの虚しさを呪う。死と大いなる夜への合一の憧れが、螺旋のように高まっていく(愛の二重唱)。
 第3場
クルヴェナールが「お逃げください、トリスタン様!」と駆け込んでくる。続いて、王と家臣たちがこの場に踏み込んでくる。愛する甥に裏切られた苦しみを切々と訴えるマルケ王に同情の思いを寄せるトリスタンだが、「母が死の間際に私を生み出した夜の国へ、私は先に行く」と告げ、イゾルデも「その道をお示しください」と応える。その様子を見て憤慨し斬りかかるメロートに対し、トリスタンはわざと剣を落とし、その剣先にかかる。

第3幕:ブルターニュにあるトリスタンの城の庭
 前奏曲〜第1場
海が見える。クルヴェナールが、傷ついた彼をここに運んできたのである。牧人の吹くもの悲しい笛の音に、トリスタンは昏睡から醒めて、夜の国のことを語り、だがイゾルデはまだ昼の光の中にいる、と言う。クルヴェナールは彼を励まし、かつてと同じように彼の傷を癒せるのはイゾルデしかいないので、コーンウォールにそのむね使者をたてたと告げる。これを聞いてトリスタンは興奮し、幻覚の中で近づく船を見る。やがて朦朧とした意識のなかで、愛の薬を呪い、永遠の渇きを呪い、太陽がむなしく照らすこの世を呪う。そうした中、牧人の笛が船が現れたことを知らせる。
 第2場
イゾルデが来る、とトリスタンは喜びに身を起こす。船が近づくと、トリスタンは「かつて傷から血を流しながらモロルトを討ったが、今日も血を流してイゾルデを得たのだ」と自ら包帯を引きちぎり、立ち上がる。しかし、駆け込んできたイゾルデに抱かれて、彼は息をひきとる。彼女もまた気を失い、トリスタンの上に崩れ落ちる。
 第3場
牧人が2番目の船が現れたことを伝えに来る。マルケ王が彼女を追ってきたのだ。クルヴェナールは、配下の者と共に王の家来と戦いメロートを血祭りにあげて、自らも死ぬ。だが王はブラゲーネの告白を聞いて、甥と妻の仲を許そうと辛い決心をしてやってきたのだった。王は血なまぐさい辺りの様子に心を傷めるが、ブランゲーネはイゾルデにまだ息があるのを知り、揺り起こす。イゾルデはもう何も目に入らぬ様子で「優しく静かな彼の微笑み」と、死せるトリスタンの息吹が世界に満ち、この神々しい音楽の波の中に溺れていく喜びを歌い、ブランゲーネの腕に抱かれながら、トリスタンの亡骸の上にやわらかに崩れ落ちて息絶える。(イゾルデの愛の死)

--- 終演(約3時間55分) ---
(参考 Wikipedia)


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今回参考に聴いたCDはこちら。第1幕がCD2枚、第2幕と第3幕はそれぞれCD1枚ずつに収まっています。ヴァルトラウト・マイヤーの表情豊かなイゾルデを聴いているだけで、全体聴き通せます。

 tristan_isolde.jpg
「トリスタンとイゾルデ」バレンボイム&ベルリンフィル、マイヤー、イェルザレム(1994)

https://ja.wikipedia.org/wiki/トリスタンとイゾルデ_(楽劇)


--- memo ---
今日11/3は文化の日。「自由と平和を愛し、文化をすすめる」祝日だそうです。

「タンホイザー」 (Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg, 1843-45)
「ローエングリン」 (Lohengrin, 1846-48)
「ニーベルングの指環」 (Der Ring des Nibelungen)
 ・序夜「ラインの黄金」 (Das Rheingold, 1853-54)
 ・第1夜「ヴァルキューレ」 (Die Walküre, 1854-56)
 ・第2夜「ジークフリート」 (Siegfried, 1856-71)
 ・第3夜「神々の黄昏」 (Götterdämmerung, 1869-74)
「トリスタンとイゾルデ」 (Tristan und Isolde, 1857-59)
「マイスタージンガー」 (Die Meistersinger von Nürnberg, 1867)
「パルジファル」 (Parsifal, 1877-82)

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恋するにゃこたん or 愛の妙薬 [トリスタン以後]

ハウステンボス のハロウィーンTVCMに「恋するにゃこたん~フリもフラレもあなたのまま~」の起用が決定しました!(9月6日~10月下旬まで九州地区で放映されます!)<--- 廣川奈々聖のツイッターから


 【ハウステンボス公式】ハロウィーンTV-CM

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ちなみにハウステンボスの秋イベントには、次のようなものが。

 キャッとするハロウィーン ねこまつり(9/9-10/31)
 http://www.huistenbosch.co.jp/event/halloween/

 ピカソとオペラ 秋の大人旅(9/9-11/13)
 http://www.huistenbosch.co.jp/event/otona-autumn/


後者ではドニゼッティの「愛の妙薬」を、40分のダイジェスト版にして演奏するそうです。(ウクライナ・ハルキウ・オペラの現役ソリストたち、ソプラノ/テノール/バリトン/バスが、ピアノ伴奏でとのこと)


 L'elisir d'amore - 'Una furtiva lagrima' (Vittorio Grigolo, The Royal Opera)


「愛の妙薬」はドニゼッティの1832年の作品。ワーグナーの楽劇(1857-59年)では「トリスタンとイゾルデ」の物語自体をなぞりますが、こちらのオペラではそれが舞台小物として登場。農場主の娘アディーナが文盲の農民たちにせがまれ、その本の妙薬のくだりをちょっと読み聞かせ、「こんな薬があったらね」と皆でおどけています。

しかし、アディーナに想いを寄せる農夫ネモリーノ、そんな「愛の妙薬」を得るために自分を兵隊に身売りまでしてしまう。その一方で、本人とアディーナはまだ知らないけれど、亡くなった叔父の遺産が転がり込むということで今やモテモテ。ネモリーノが他の娘たちに踊りに誘われる様子を見て、アディーナは自分の中に嫉妬心が湧いているのに気づきます。

取り残されたアディーナは薬屋から、ネモリーノが兵役の前借り金で妙薬(実は単なるボルドーワイン)を買い付けた話を聞き、「自分のことをそこまで愛していたの」と感涙。片やネモリーノも、アディーナが別れ際に見せた翳りの表情を思い出し、この愛が成就するようにと、上のアリア「人知れぬ涙」を歌うのでした。


「愛の妙薬~フリもフラレもあなたのまま~」


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